31請願第3号 (まちづくり環境委員会付託)
受理年月日 2019年2月22日
件名 三鷹市議会から東京都に対し、水道事業民営化の参議院附帯決議に基づ
いた適切な対応を求めることについて
提出者 甲斐 正康
紹介議員 嶋﨑 英治
要旨
〔趣旨〕 2018年12月5日、政府は水道管の老朽化した水道施設の更新と、耐震化推進のため、コンセッション方式の含まれた新たな改正水道法案を可決した。 本法案では今まで地方自治体で管理していた上下水道の運営権が民間企業に委託することができるようになる。 現在、日本の水道管の大部分が40年とされる耐用年数を超え、随時交換すべき時期にあるが、費用や人手不足等の問題からスムーズに進んでいない。 このような状況のもと民営化を進めることは、以下4つの問題がある。
1つ目の問題は、民間の力をかりた場合のコスト削減効果が具体的な数字で提示されていないことである。 一般的に民営化は、ビジネスノウハウを活用しコスト削減できると言われるが、現状の品質を維持しながら、水道管交換を加速させる場合には、人件費が必要となる。 その分を水道料金に上乗せするので、公営のままで同じ対応をする場合、予想される料金の値上げ幅と大差ない。 また、民間企業は利益を追求するため、さらに料金を上乗せする可能性がある。そのため、民営化だけで市民の水道料金負担が抑えられるとは考えにくい。
2つ目の問題は、民営化して水道料金の上限を設けた場合、公営における問題を同様に引きずる可能性である。 民営化した場合に水道料金の上限を設ければ、民営企業は、事業が赤字にならないようにサービスレベルを下げると考えられる。 料金の上限設定は、水の品質低下や水道管交換が延伸にはね返る可能性がある。この場合も、公営のままであることと状況が変わらないと思われる。
3つ目の問題点は、海外での民営化事例によるリスク分析が不十分なことである。 民間企業に運営権を売却する場合、長期契約になるため、民間企業の与信、倒産リスクも考慮する必要があり、必然的に広域をカバーできる導入実績のある企業が採用 される。
日本では広域事業者は少ないため、フランス、ヴェオリアなど広域で実績のある一 部の海外企業が採用される可能性が高く、水道事業の独占を招くおそれがある。
海外では、民営化による水道料金の値上げ幅が大きく、再公営化された事例が253 例もある。
民間企業との長期契約である以上、再公営化せざるを得ない状況になれば、途中解約に対しては違約金が発生することになるが、それも考慮した長期のトータルコスト試算で民営化の判断をすべきである。
政府は235例中3例だけ分析検討しただけであり、民営化に対するリスク分析が明 らかに不足している。
4つ目の問題は、国が率先して問題解決の指針を示していないことである。
水道法改正に当たり、参議院では附帯決議として「水が健全に循環するために国、 地方自治体と水道事業者の連携」、「管路の対応などの整備に万全を期すとともに人 員及び予算が十分に確保されること」、「水道の基盤強化」、「水道施設が国民共有の貴重な財産のため地方自治体において検討すべき事項の具体的な指針」、「必要な支援 を含めた水道事業システムの構築」、などが求められているが、いまだ国が率先して 問題解決の指針を示しておらず、このままでは地方自治体任せによる国の責任放棄を 容認してしまう。
以上の問題の解決に向けて、まずは、公営のまま水道事業管理の広域化を進め、可能な限りのコスト削減を推進し、水道料金の試算を行い、国、都道府県、市町村との 役割及び費用分担を協議すべきであり、その結果を踏まえて、民営化の是非を検討すべき。
水は国民にとって、絶対に必要なライフラインである以上、これらの課題が残った まま民営化が進められることは「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社 会権規約)」の第11条及び日本国憲法第25条(生存権)が脅かされることになる。
上記理由により、国が率先して問題解決の指針を示さない限り、三鷹市議会からは 東京都に対し、水道事業民営化の参議院附帯決議に基づいた適切な対応を求めるよう 意見書を提出していただきたい。
上記を地方自治法124条の規定により請願書を提出する。
自治市民21
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