三鷹市議会レポ 2016年第1回定例会最終日・本会議:議案審査・質義討論集 その1

子どもの貧困対策の抜本的拡充を求める意見書

 今、日本の相対的貧困率は悪化を続け、最新の政府統計(2012年)では16・1%、約6人に1人が貧困ライン以下で、子どもの貧困率は16・3%にのぼる。母子家庭など一人親家庭の貧困率は54・6%(同)と突出した高さを示し、経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国で最悪となっている。所得格差が決して小さくないドイツ、フランスなどの子どもの貧困率が日本より低いのは、税制度や社会保障制度によって所得の格差を是正しているからである。
 本年3月1日に公表された山形大学の調査結果によれば、生活保護費の基準となる最低生活費以下での暮らす子育て世帯において、貧困状態にあるのは1992年には5.4%約70万世帯だったが、2012年には、約1050万世帯のうち13.8%、約146万世帯となっており、貧困世帯の数で約2倍、割合を示す貧困率では約2.5倍となっている。
また、本市の就学援助率は11.7%(2015年度)、東京都の就学援助は2013年度以来5人に1人という高止まりになっている。
 経済的理由で子どもの医療機関の受診を控える貧困世帯が、そうでない世帯と比べ4・4倍。大学進学率は、全世帯73%にたいし生活保護世帯31・7%などと著しい落差が生まれている。
 民間機関の推計では、貧困対策で貧困世帯の子どもの進学状況などが改善した場合、生涯所得の合計が2・9兆円増え、国の財政が1・1兆円改善する。貧困を放置することは、日本社会の大きな損失であり、これを解決することは日本の未来を切り開くことにつながる。
  2014年1月「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が施行された。同法第1条は、「子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備する」ことなどを目的とし、第2条では、「子どもの貧困対策は、子ども等に対する教育の支援、生活の支援、就労の支援、経済的支援等の施策を、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのない社会を実現することを旨として講ずることにより、推進されなければならない。」としている。
 しかし、政府の貧困対策は不十分である。政府は、一人親世帯の第2子からの児童扶養手当の増額をするとしているが、一人親世帯の約6割を占める子ども1人世帯には手当の増額はない。生活保護世帯では子どもの数が多いほど「生活扶助費」「冬季加算」が削減される。「子育て世帯」向けの給付金も来年度は廃止される。
 これでは子どもの貧困問題は改善されない。まともな食事は給食のときだけという実態もあり、看過できない状態となっている。子どもの未来を開くためにも抜本的な貧困対策が必要である。
よって、本市議会は、国会及び政府、東京都に対し、下記事項について抜本的拡充を求める。
              記

1 子どもに対する教育、生活支援を拡充すること。
2 保護者に対する就労、経済的支援を拡充すること。
3 子どもの貧困対策を総合的に拡充すること。
4 親子2人の場合、年間所得が57万円を超えれば児童扶養手当は徐々に減額され、230万円を超えればゼロになる所得制限を大幅に緩和すること。
5 給付型奨学金を早急に創設すること。
6 地方公共団体が、就学の援助、学資の援助、学習の支援その他の貧困の状況にある子どもの教育に関する支援のために必要な施策を講ずるに必要な財源を国及び東京都が保障すること。

 上記、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

2016年3月29日 三鷹市議会

提出者 三鷹市議会議員 嶋 﨑 英 治
賛成者 三鷹市議会議員 大 城 美 幸
 〃      〃   伊 沢 けい子
 〃      〃   増 田  仁

採決結果 賛成17 反対10(自由民主クラブ