(写真: 宮川敏一)
2024.11.16
「千葉県憲法を活かす会」定期総会にて毎日新聞記者の東海林智さんが講演をされました。
テーマは、「低賃金から労働者に分断を持ち込む雇用社会を考える」
です。
以下、東海林智さんのお話からです。
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1995年、当時の日経連(現経団連)が「新時代の日本的経営」を提唱し、それまでの終身雇用制の雇用体系から新自由主義的概念が持ち込まれた。
その中身は
1 長期蓄積能力活用グループ(いわゆる正社員)
2 高度専門能力活用グループ(専門型派遣)
3 雇用柔軟グループ(パート、契約などいわゆる非正規労働者)
である。
従来の正社員で採用し、定年まで働くという日本型雇用から新たな雇用スタイルへの転換を意味し、中身は正社員を減らし、非正規雇用を増やす方針だった。
その後、30年かけて20%だった非正規雇用が、現在40%まで上昇した。
当然ながら、非正規雇用は低賃金であり、経営者がクビを切りやすくなり、その上で低賃金が特徴。
「新時代の日本的経営」の本当の狙いは、賃下げであり、日経連でこの提言を行った成瀬健生氏は、東京新聞のインタビューで、「高くなった賃金を下げるのが目的だった」と語っている。
https://search.app?link=https%3A%2F%2Fwww.tokyo-np.co.jp%2Farticle%2F233389&utm_campaign=aga&utm_source=agsadl1%2Csh%2Fx%2Fgs%2Fm2%2F4
その結果起こったことは、非正規雇用は低賃金で働くことが常態化し、ワーキングプア(働く貧困層、年収200万円以下)が増加し、働く貧困という矛盾が生まれた。
提言後、非正規化を進めるために、正社員の新規採用が抑制され、大学や専門学校を卒業しても正社員としての就職が厳しい世代が生まれた。
それらは「ロスト・ジェネレーション」「就職氷河期世代」と呼ばれ、その世代が今や50代に手が届く年齢になった。
労働者の中に、正規社員、非正規社員の分断が生まれる。
働くということが物のように扱われ、その象徴がリーマン・ショックの際の派遣切り。
まさに労働者を部品のように扱い、年末を前に仕事と寮から派遣労働者は追い出された。
その派遣切りは当時社会現象となり、派遣切りされた労働者の支援に「年越し派遣村」が準備され、労働者への支援が始まり、皮肉にもそれが経営側のモラルハザードを可視化する場となった。
現在、「77年前に制定された労働基準法が想定できない新たな働き方に直面している」とし、厚労省に「労働基準関係法制研究会」が立ち上がった。
経団連の提言でその中身が見えてきたのが、組合との労使協定で労働時間規制のデロゲーション(適用除外、逸脱)の範囲拡大と方向性を示唆した。
デロゲーションとは、「労使のコミュニケーションが取れていれば、そのことでデロゲーションできることであり、デロゲーションの自由度は格段上がる」ということで、ようは経営側と労働者の間での話し合いが行われれば、労働基準法を逸脱(デロゲーション)しても良い、ということである。
そんなになれば、労働基準法の意味がなくなる。
労働基準法とは、労働するうえでの「最低基準のルール」であり、安易なデロゲーション議論は、労働者の命と健康、尊厳を守る意味からも十分に注意して見る必要がある。
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この他にも、東海林さんから取材現場からのリアルな貧困のお話を具体例をお聞きしました。
自分は、このお話で出てきた、ロスト・ジェネレーション世代です。
リーマン・ショックの時、自分は社会のことなど全く興味がないトラックドライバーとして働いていました。
ニュースで年越し派遣村を見た時に、「かわいそうだなぁ、大変だな」という思いと、「自分ももし何かあったらこうなってしまうのではないか」という恐怖がありました。
その恐怖は頭の片隅にありながら、敢えて考えないようにして生きてきました。
考えないように生きる、ということは、実はただ逃げているだけでした。
東海林さんの著書、「ルポ低賃金」を電車の中で読みながら帰ってきました。
読みながら涙が溢れそうになりました。
それは、夢を抱え東京に上京したのに、一つ歯車が狂った途端に生活が立ち行かなくなり、気付いたら犯罪に手を染めなければ生活が出来ない、という話。
もう一つは、愛する人と結婚し、子どもを授かったがその後離婚し、その後のコロナ禍で生活が立ち行かなくなり、親子心中の手前までいった話。
社会が歪んでいる。
自分はたまたま、本当にたまたま丈夫な身体に産まれ、トラックドライバーとして働き、なんとかここまで生きてこられた。
だが、今思えば「何か歯車が狂えば」どうなっていたかわからない、ギリギリの人生だった。
そんな中、「なんでこんなに生きづらいんだ」と考えるようになり、政治の道を志すことを決めました。
政治を変える、いや社会を変える。
自分はこの社会構造を変えるため、誰しもが幸せに生きて行けることが出来るために、社会を変える為に政治を変える、ということを決めた。
賃金を上げ、派遣労働を禁止し、そして不安定な雇用をなくす。
低賃金で派遣労働を行い、何かあるとすぐクビを切られる。
それが、人の人生を狂わす、ひいては人が命を落とすことになる。
新自由主義とは、「規制緩和」「民営化」「公共予算の削減」であり、労働市場の規制を緩和し、経営者にとって労働者を都合よく扱う事が出来る「派遣労働」というシステムを導入し、それで労働者を物として扱うことでクビを切りやすくなり、経営者は都合よく利益を上げる。
そこで苦しめられるのは、労働者です。
コロナ禍で困窮した多くの人は、シングルマザー、若者、高齢者たち。
その多くが非正規労働者。
社会を変える。
(報告 かい正康)
自治市民21
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